夜は音楽を聞くものじゃない
夜はしじまに耳をこらそう
安らぎつつ 警戒しよう
夜のとばりの裏側で 聞き耳を立てている
いま一人の自分を

私はその顔を知らない
ただ 低い 聞こえるともつかないささやき声
それだけを 聞いたように思う
おだやかな空調のうなり
かすかに響いてくるきりぎりすのすだき
それらのはるか底で とつとつと語られる
いまだ聞きとられたことがなく
これからも永久に 広漠な薄明の中を
力なく徘徊する他にない
秘密の言語(ことば)
そうしたものを 聞いたように思う

そのつぶやきを 耳の底で
天空から滴ってくる雫に責め苛まれて
震えながら濡れそぼる若葉のように
受け止める 私は

まるで非英雄的な冒険譚
とどまる者の 動けない者の
そうした者たちの 夜夜のまだらな燐光
どこかで蛙が鳴きだした
かれらもまた 動こうとはしない
恋するかれらは
ただ歌う ただ待つ
鳴きやんでいるとき
かれらは聞き耳を立てているのだ
自分の歌声が闇の奥に向かって消尽してゆく
その様に
なすすべもないという
その暗く巨大な安らぎの中で

私もまた
そうした夜の歌が歌えれば
何と幸せなことだろうか
しかし私は歌わない
私のできることは ただ耳を澄ませること
夜のしじまの裏側の いま一人の私の声に
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「投げちまえ!」


作詞:ほけんがかり


お前、何、泣いてんだ
そんなに歯を喰いしばって
誰にも見られないようにと
こんな暗がりの中で

小ずるい奴ら、偉そうな奴らが
お前の心を折りにくる
もっともらしい理屈をつけて
でも所詮全てクソじゃねえか

投げちまえよ!
たった今からこんな場所はおさらばして
いっしょに空でも眺めよう
風に吹かれながら

お前は、よくやってるさ
それは俺が一番よく知っている
でも聞けよ、どんなに頑張っても
笑うのは、クソどもだけさ

のらりくらりのお前の上司
お前と目も合わさない同僚
ケダモノみたいな取引先
どいつもこいつもマトモじゃない

投げちまえよ!
たった今からこんな場所はおさらばして
いっしょに海にでも行こうじゃないか
お日様を浴びながら

お前の、苦い涙
それさえあざ笑うかのように
クソどもが罵声を浴びせる
やつら、人間じゃねえ

ここは人でなしの王国さ
だから人でなしのやることは
人でなしにまかしとけ
お前は人間なんだから

投げちまえよ!
たった今からこんな場所はおさらばして
いっしょに空でも眺めよう
風に吹かれながら

お前の柔らかな胸に
容赦なく突き刺さる屈辱
お前は死ぬまで忘れないだろう
このヒリヒリと焼け付く痛みを

そんなことは知ったことじゃねえと
世の中はゴーゴーと回る
なら俺たちも叫ぼうじゃないか
お前らなんぞ、知ったことじゃねえ!

投げちまえよ!
たった今からこんな場所はおさらばして
いっしょに海にでも行こうじゃないか
お日様を浴びながら

お前、何、泣いてんだ
そんなに歯を喰いしばって
誰にも見られないようにと
こんな暗がりの中で

せめて、今は一緒に泣いてやるさ
お前を抱きしめながら
傷つくことは恥じゃねえ
それは人間の証

投げちまえよ!
たった今からこんな場所はおさらばして
いっしょに空でも眺めよう
風に吹かれながら

「バビロン」


詩:ほけんがかり


バービローン(イーデオーンみたいな感じで)
バービローン

ビローン ビローン
(コーラス:ビローン!ビローン!)
ババアがビローン
(コーラス:ババアがビローン!)
だからバビロン!
だからバビロン!

襞と襞の間の暗黒
(コーラス:だから何だ!だから何だ!)
俺を狂わす事象の地平線
(コーラス:HEY、ホーキング、お前の負けだ!)
潮の香りがモナドとなって
(コーラス:HEY、ライプニッツ、お前の負けだ!)
とめどない乾きが喉を焦がす
(コーラス:HEY、バビロン!HEY、バビロン!)
 
バービーロン!(マークーロスみたいな感じで)
バービーロン!
バービローン!(マークロースみたいな感じで)
 
ビローン ビローン
ババアがビローン
だからバビロン!
だからバビロン!
 
ローカル線のしけた温泉街
(コーラス:一級河川!一級河川!)
坂の上のストリップ劇場
(コーラス:もぎりのじいちゃん80歳!)
俺はひとりジンをあおりながら
(コーラス:ワンカップ!ワンカップ!)
ババアが足を拡げるのを眺めるのさ
(コーラス:HEY、モザイクキャンセラー、お前の勝ちだ!)  

バービーロン!
バービーロン!
バービローン!
 
快楽とすら呼べない頽廃
(コーラス:一切皆苦!一切皆苦!)
終わりも目的もない疲労
(コーラス:アリナミンV!アリナミンV!)
灰色の今日が灰色の明日を生み
(コーラス:さようなら!こんにちは!)
これじゃ卵もニワトリもあったもんじゃねえ
(コーラス:ヨード卵!ヨード卵!)

ビローン ビローン
ババアがビローン
だからバビロン!
だからバビロン!

ババアの瞳はいつもつや消し
(コーラス:ブラックだ!ブラックだ!)
何も映さない絶対零度
(コーラス:バナナも凍る!バナナも凍る!)
あごを突き出し腕を拡げる
(コーラス:プラトーン!プラトーン!)
まるでこの世の全てが無意味な灰だというように
(コーラス:HEY、ジブリ、お前の負けだ!)

バービーロン!
バービーロン!
バービローン!

ババアの股間のダークマターから
(コーラス:見ざる聞かざる!見ざる聞かざる!)
ダークエネルギーが俺に吹きつける
(コーラス:超ひも理論、お前の負けだ!)
俺は突然啓示を受けた、稲妻のように!
(コーラス:HEY、モーゼ、お前の負けだ!)
俺は立ち上がる、小便臭い椅子を蹴り倒して
(コーラス:HEY、バビロン!HEY、バビロン!)

ビローン ビローン
ババアがビローン
だからバビロン!
だからバビロン!

ババアよく聞け今俺は知った
(コーラス:言わないで!言わないで!)
お前のその白髪まじりのまんこから
(コーラス:あらいやだ!あらいやだ!)
俺は生まれたんだ!今この瞬間に!
(コーラス:HEY、処女マリヤ、お前の負けだ!)
俺はお前の息子だったんだ!お母さん!
(コーラス:よくある話!よくある話!)

バービーロン!
バービーロン!
バービローン!

ピンクのライトが斜めによぎって
(コーラス:照明さんは、ババアのだんな!)
ババアの腰と因果律がねじれる
(コーラス:エントロピー!エントロピー!)
田舎町に突然現れた裸の特異点
(コーラス:アインシュタイン、お前の負けだ!)
俺はなす術もなく待つ、この宇宙の裂け目を見つめながら
(コーラス:HEY、バビロン!HEY、バビロン!)

ビローン ビローン
ババアがビローン
だからバビロン!
だからバビロン!

けだるい終末の予感の中で
(コーラス:だけど自分は大丈夫!)
冥(くら)い胎から何かが生まれる
(コーラス:ヒッヒッフー!ヒッヒッフー!)
忽然と現れた黄金と頽廃の王国
(コーラス:HEY、スピルバーグ、お前の負けだ!)
それこそは伝説の魔都バビロン!
(コーラス:HEY、バビロン! HEY!バビロン!)

バービーロン!
バービーロン!
バービローン!

ババアから生まれた悪徳の都で
(コーラス:HEY、バビロン! HEY、バビロン!)
俺は全てを忘れて踊る
(コーラス:HEY、バビロン! HEY、バビロン!)
未来も過去もあったもんじゃねえ
(コーラス:HEY、バビロン! HEY、バビロン!)
全てはババアの股から生まれ、全てはババアの股に消える
(コーラス:HEY、ジーザス!お前の負けだ!)

燃え上がれ!燃え上がれ!燃え上がれ!バビロン!(ガンダムみたいな感じで)

ビローン ビローン
ババアがビローン
だからバビロン!
だからバビロン!





 
生きるということが、まっさらな宇宙に、紫色の染みをつけて汚すことだとしても、
その染みは、一つの歌でなければならないだろう。
だけどその歌を誰が聞く?

私の背骨の中心を、冷たい震えが走るとしても、
その震えは、私の魂の奥深くの牢獄で、永久に飼い殺しにしなければならないだろう。
だけど今、閉ざされたカーテンの外、遠くから響いてくる地鳴りは一体何なのか?

やがて朝が来るとしても、
その前に、冷たい寝床から身を起こし、暗闇の中で叫ばなければならないだろう。
なぜなら、その悲鳴は神聖なものだから。
 
 
      2006年11月04日土曜日午前10時44分、アパート付近
 


           黄色。 結婚詐欺師が迎える水曜日の朝。
           黄色。 歯医者でわき起こる場違いな高笑い。
           黄色。 死人が大真面目で演じるミュージカル・コメディー。
  
 
  ハナミズキの実、2006年11月02日木曜日午前9時50分、アパート付近
 


           赤。 祝福された孤立。
           赤。 全ての喜ばしいものへの予感。
           赤。 そこにありながらも、別のどこかに属するもの。
 
     2006年9月8日午後8時30分



 昔、男ありけり。女のえ得まじかりけるを、年を経てよばひわたりけるを、からうじて盗み出でて、いと暗きに来けり。芥川といふ川を率て行きければ、草の上におきたりける露を、「かれは何ぞ。」となむ男に問ひける。
 行く先多く、夜も更けにければ、鬼ある所とも知らで、雷さへいといみじう鳴り、雨もいたう降りければ、あばらなる蔵に、女をば奥に押し入れて、男、弓・胡ぐひを負ひて戸口にをり、はや夜も明けなむと思ひつつゐたりけるに、鬼はや一口に食ひてけり。「あなや。」と言ひけれど、雷鳴る騒ぎに、え聞かざりけり。やうやう夜も明けゆくに、見れば、率て来し女もなし。足ずりをして泣けども、かひなし。

 白玉か何ぞと人の問ひし時露と答へて消えなましものを

(『伊勢物語』 第六段 「芥川」より)


                                           2006年9月8日午後12時30分
なんか似てる人。

1971_Stanley_Kubrick.jpg

Stanley Kubrick
1928-1999


whitman_dag.jpg

Edgar Allan Poe
1813-1849