2006年11月15日水曜日午後5時32分、目白台
 
 
 夜、饂飩をすすっていると、ピンポンと玄関のベルが鳴った。
 物売りにしては非常識な時間帯だったので、さては大家のじいさん、また何か文句をつけに来たなと身構えてドアを開けると、そこに銀色の四角いロボットが立っていた。
 ロボットは、丸い目玉をチカチカと点滅させ、手錠のような二本指をカチカチと鳴らしながら、挨拶もなしにこう言った。

「心セヨ ・ ガガッ ・ 時ハ既ニ満チタリ ・ ガガッ ・ 米味噌醤油ヲ絶ヤスナ ・ ガガッ」

 私は何とも答えようがなかったので、ロボットの頭の上で渦巻き型のアンテナがくるくる回転しているのを黙って見つめていた。するとロボットは、ふいにくるりと私に背を向け、ガシャガシャと歩み去りかけた。
 私は特にかける言葉もなかったが、何とはなしに、ロボットの背中を二、三度叩いてやった。堅牢なボディの中に、機械類がぎっしり詰まっているのかと思いきや、空のブリキ缶を叩いたような、妙にうつろな音が響いた。私は訳もなくどぎまぎして手を引っ込めた。
 ロボットは振り向いて、飛び出た目玉をまた点滅させた。

「涙ヲ流ス者 ・ ヲ ・ 探セ」

 四角い格子状のスピーカーから最後の音節が流れ出ると、目玉のランプがすーっと光を失った。ロボットは再びきびすを返し、ガチャンガチャンと重たげな足音を立てて、夜の闇の向こうに消えていった。


  2006年11月15日水曜日午後5時27分、目白台
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