鎌倉には何度となく足を運んでいるが、いつも名もなき路地ばかり徘徊しているので、たまには普通の観光をしてみようと思い立ち、大仏と鎌倉文学館を見に行く。両方特に感慨なし。
斜に構えるつもりはないのだが、いわゆる名所旧跡を訪ねて面白かった例がない。
仕方がないので、またいつもの通り路地にもぐりこむ。
JR大磯駅近くの交差点でのこと。
赤信号だったが、車の影がなかったので、横断歩道を小走りに渡ると、物陰から大声が。
「信号無視しちゃダメだろう!国道1号だぞ!」
老人である。
緑色の腕章をつけているので、ボランティアで交通整理をしているのだろう。
「へえ」と首をすくめて足早にやりすごす。
時代劇に出てくる下っ端のチンピラになったような気分である。
へい、悪うござんした、許しておくんなまし旦那、へい。
しかし、後で考えてみると、なぜ老人が「国道1号」を殊更に強調したのか、どうもよくわからないのである。