先日亡くなった映画監督のSさんの「偲ぶ会」に出席する。
葬儀は既に近親の人々だけで済まされており、今回の「偲ぶ会」は、一般関係者向けに都内某所の宴会所を借りて開かれたものである。
私はある時期Sさんに色々とお世話になったのだが、ここ10年ほどはあまり交際がなかった。
だからSさんの死を聞かされたときも、なんだかピンと来なかったのである。
悲しみもショックもなく、ただ釈然としない気持ちだけがあった。
私は、故人を悼むというよりも、その宙ぶらりんな感覚を何とかしたいと思って「偲ぶ会」に赴いたのである。
会場は、数百人もの出席者でごった返していた。
そこここに、懐かしい顔がちらちらしている。
顔は覚えているが、どうしても名前が思い出せないような人も結構いる。
何人かの知人と挨拶を交わし、旧交を暖め合う。
会が終わった後、Sさんの盟友だったHさんに率いられて新宿のスナックに向かい、深夜まで飲む。
さらに私を含めて4人だけ残り、居酒屋に場所を移して朝を迎えた。
結局、彼が死んだということは、よくわからずじまいである。
イリヤ・カバコフ(1933-) 葉山の県立近代美術館に、イリヤ・カバコフの展覧会を見に行く。
私は現代美術に関しては全くの門外漢だが、このウクライナ出身の芸術家は大好きなのだ。
今日は展覧会の初日で、私が展示を見終わってエントランスに戻ると、ちょうどレセプションが始まるところだった。なんとカバコフ本人もいるではないか。
関係者にまぎれて、係の女性からワインのコップを受け取り、最前列で乾杯する。
初めて見るカバコフ本人は、快活で人のよさそうな老人だが、旧ソヴィエトの体制下で、絵本の挿絵作家としてしたたかに生き抜いてきたその人生を思うと、柔和な笑顔にも何だかすごみが感じられるようである。