軍艦と少女 その1

 その細長い紡績型の丘は、すっかり住宅に覆い尽くされていた。
 ちょうど絨毯に寄った皺のように、K平野の外れに盛り上がったささやかな丘である。元気な子供なら、平地と高台を結ぶS字坂を、自転車で一気にのぼりつめてしまうだろう。端から端まで歩いても、大人の足なら五分とはかかるまい。
 しかしその丘は、辺りに一種独特の威厳を放っていた。まだ真新しい、互いによく似たおもちゃのような家々が、丘の端から端まで南に面して整然と並び、段をなしている様は、丘全体を一つの建造物に見まがわせたのである。そう、それは巨大な軍艦に驚くほどよく似ていたのだ。
 まず、ふもとでは、家々が隙間なく二段に並んで、堅固な守りを誇っている。それらはさらに、同じ格好と色をした五、六軒づつの小さなグループに分かれていて、淡い灰色やクリーム色の壁に、黒い窓が等間隔に穿たれて並んでいる様は、ずらりと並んだ銃眼を連想させるのだった。
 そして、辺りを無言のうちに威圧している、それら二列の砲塔群のすぐ背後には、高さ十メートル以上もあろうかというコンクリートの壁が垂直に切り立っている。丘の全長にわたって続いているこの真白い崖が、いわばこの空想の巨艦の舷側をなしているのである。崖は、丘の東の端にわずかに残されている雑木林から始まって、凹凸のないまっさらな垂直面を見せて数百メートル続いたあと、西の端の手前で一度だけ鈍角に折れ曲がり、見事な舳先を形作っている。この偶然の造化によって、生い立ち平凡な丘に、簡素で威厳に満ちた古き良き時代の軍艦の容姿が与えられているのである。
 甲板の縁(つまり崖の上)には、白い格子の手すりが途切れることなく続いていて、軍艦の無骨なシルエットに端正さと優美さを添えている。その背後から、すぐ三段目と四段目の住宅が積み重なり、砲列はそこで尽きて、背後の空に規則正しいギザギザ模様を刻んでいる。
 最後に、この驚くべき風景の仕上げとなるのは「艦橋」である。高台の中央には、十階建ての白く輝くビルディングがただ一棟、辺りの街並を圧して聳え立っているのである。ビルの屋上からは、給水塔と三本の大小のアンテナが空に黒々と突き立ち、よく晴れた夕暮れ時などに、油断ない警戒心に裏打ちされた沈着さ、自分をとりまく世界全てに対する独立心、天を指して垂直に立ち昇る寡黙な高貴さ、といった感情をすべて混ぜ合わせ、純粋で強い喜びに変えて、私に向けて発信するのだった。

COMMENT

白石昇 URL @
05/03 16:53
ずざあ.  コメント一番乗りー。いえーい。

 いつぞやはお言葉ありがとうございました。
ムー大陸 URL @
05/03 19:12
獰猛(どーもー). いっ意外な人から。。。(ちょっとビビるw
一番乗りありがとうございます。
おもいつきで始めてしまいました。
これからどうなるかわかりませんが、
よろしくおねがいします。
Yonda? URL @
05/03 21:59
白石、うるさい!. 

こんばんは。
風景描写を読むのがいやで、戯曲に走ったわたしが来ましたよ。
やたら読みなれぬ漢字が多いのは読者に不親切。
しかしここは非営利。個人ブログ。読みたくないなら来るな。
その通りであります。

また嫌がらせを。
「しかし」「まず」「そして」「最後に」
いかにも文章を書きなれていないという雰囲気が(ごめんなさい!)。
描写に接続詞ほど似合わぬものはない。

人間が登場して、物語が動き始めたら教えてください。
その回から読むようにします。
というか、ムー先生♪
このようなことより、もっと書くネタを先生はたくさん持っているような……。
ブンガク・ブンガクしないほうが、
ムーちゃんは生きると思うのですが。
Yonda? URL @
05/03 22:26
ちなみに. 

この風景描写を読んでもさっぱりイメージがわかないのは、
読んでいるわたしが悪いのか、
書いているムー大陸さんが悪いのか、
どちらも悪くないのか、どちらも悪いのか、
幅広い問題提起をしているブログだと思います。
ムー大陸 URL @
05/03 22:35
あはは. 

当ブログではほめ言葉しか受け付けておりませぬ。
まあおてやわらかにw
Yonda? URL @
05/03 22:50
怒っているなさては!. 

存在の根幹を揺さぶられるような問題意識のある風景描写である。








 

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