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シュレディンガー対猫



シュレディンガーは、猫に対していつもイライラしていた。
シュレディンガー、といっても、あの有名な物理学者ではない。
たまたまシュレディンガーという名前の、どこにでもいる平凡な男なのだった。
むしろ、かれの風采といい能力といい、平均以下なのかも知れなかった。
湯川という姓だからといって物理学者とは限らず、鬼龍院という姓だからといって必ずしも極道ではないのと
同じことである。

さて、かれは猫に対して強い憎しみを持っていたのだが、それはけっして猫一般に対してではない。
かれは家で飼っている、一匹の五才ほどの太ったオス猫を憎んでいたのだ。
シュレディンガー夫妻が結婚して一家を構えたとき、まだ生まれたてのその猫が貰われてきたのだった。
シュレディンガー氏はまた、妻をも憎んでいた。もっともそれを表に出す勇気はなかった。
シュレディンガー夫人が氏を憎んでいるかどうかは分からなかった。
ただ、彼女が夫を馬鹿にしていることは確かだった。

夫人は、もうめったに夫の顔を見る事はなかったが、どうしても必要なときは、
斜めに首を振りながら、たまたま通りすがりにという感じで、一瞬視線をよぎらせるのである。
そんな時はいつも、彼女の青い目は、かれの今までの人生全てを無にするような冷笑を浮かべているのだった。
かれらの小さな宇宙の黄道面に沿って、外科医の刃のように通過する夫人の視線は、夫君の精神を痛ましく切り裂いた。
直にシュレディンガー氏は、頑に視線を別の方向に向けて、見ないふりをするようになった。
それが気弱な氏の、精一杯の抵抗だったのだ。
すると、かれの目に入ってくるのが、あせたアラビア模様のカーペットの隅で、
われ関ぜずと氏に背を向け、カリカリと一心不乱に餌を頬張っているトラ猫なのだった。
猫は、ある意味で絶妙なタイミングで、シュレディンガー氏に向かって振り向くのである。
そのまなざしたるや、数秒前に辛うじてやり過ごした妻の一瞥にそっくりだったのだ。
猫は、厚い縞の毛皮の下で盛り上がった背骨越しに、ふいにくるっと振り向いて、
夫人と同じ色の目をシュレディンガー氏に向けると、馬鹿にしたようにニャアンと一声鳴いてから、
またすぐに食事に戻るのである。
不幸な夫は、自分の背中にぞくぞくと、やるせない殺意が這い登ってくるのをはっきりと感じるのだった。

夫妻には子供がなかったため、夫人はその黄色い小さな獣を文字通り猫可愛がりしていた。
そこには夫に対するあてつけの気持ちも多分にあっただろう。
猫は決して馬鹿ではないので、そういう空気を敏感に察するものである。
その狡猾で不遜な動物は、オスでありながら、その投げやりな立ち振る舞いも、でんと座った尻も、
年々夫人に似ていったのである。

「このいやらしい恩知らずの獣め」
シュレディンガー氏は、その小さい眼をピクピクと振るわせながら、猫を睨みつけるのだ。
しかし正面からではない。また、声も出さなかった。夫人が留守の時でさえも。
それだけに、氏の奥底に鬱積して行く殺意はとめどもなかった。
かれは心の中で、この悪魔の手先とも見える小動物を、何度も何度も、さまざまな手段で殺害した。
毒殺。高所から投げ落とす。疾走するトラックの前に放り出す。風呂で煮殺す。クラシックに壁に塗り込める、等々。
そんな妄想にしばしふけった後は、必ずどっとやるせなさが襲って来て、シュレディンガー氏は頭を抱えるのである。
明確な反省の念があったわけではない。そうした聡明さがあれば、かれは別の人生を送っていたであろう。
それだけに、かれの悲嘆と混乱はますます深まった。
こうして、閉め切らなかった蛇口からコップに落ちる水滴が、いつか縁を越えて溢れ出すように、
運命はシュレディンガー氏を、あるべき所に、なすべき時に、機械仕掛けのように容赦なく、追い立てて行ったのである。

そうしてその晩がきた。
氏はソファーで新聞を読むともなく読んでいた。夫人はシャワーを浴びていて部屋にいなかった。
シュレディンガーは、紙面に目を落としたまま、皿のビスケットを手に取ろうと、足下の低いテーブルの上に手を這わせた。
すると手首に、なにかふわっとしたものが触った。
かれは驚いて新聞を手放した。
すると、皿の上にいつの間にか、かの仇敵が図々しくも鎮座していて、しっぽでかれの手を左右になでつけているのだった。
猫は、首をもたげて覗き込むようにかれを正面から見つめ、ニャアンと鳴いた。
「この畜生!」
やにわに立ち上がったハンス・シュレディンガーは、生まれてこのかた初めてと言っていいほどの激しい叫びを上げて、
猫につかみかかった。
首の骨をへし折ってやりたかったのである。これは、今までのかれの妄想には全くなかったパターンだったのだが。
しかし安穏と育った猫とて、運動不足の小太りの男にやすやすと捕まるほどの間抜けではなかった。
「可愛いフィリックス」は鋭い鳴き声と共に、一撃でハンスの右手に三筋の傷を刻むと、横様に逃げ出した。
ハンスは思わず右手を押さえてソファに倒れ込み、はずみでテーブルを蹴飛ばした。
カップが床に落ち、コーヒーが絨毯にぶちまけられた。
猫は壁際の戸棚の上に駆け上がり、入れ替わりに四角い色ガラスの花瓶が床に落ちて粉々になった。
派手な音が家中に響き渡った。
フィリックスはなおも、喉の底から憎々しげな鳴き声を上げ、戸棚から飛び降りて、壁に飾られていた皿を蹴落としつつ、
隣のローボードの上に着地した。そして、上に申し訳程度に飾られていた陶器の人形やら楯やらを滅茶滅茶に蹴倒しながら走り抜けて、
家具と部屋の角の隙間に飛び降りた。
ほんの数秒のうちに、目も当てられない有様となった部屋の中で、ハンスは右手を押さえて立ち上がった。
その顔は怒りで真っ青だった。
かれは爛々と目を光らせ、肩で息をしながら、親指と人差し指の間から滴り落ちる血を舐めた。
かれはやにわに隣の台所に駆け込んでモップを持って来ると、フィリックスが潜んでいる部屋の隅にじりじりと近寄った。
気配を感じた猫は、ただ隠れてはいなかった。
フィリックスは、壁と家具の間から飛び出すと、壁沿いに玄関に向かって突進した。
「こんどこそ逃がさんぞ!お前の最後だ!」
ハンス・シュレディンガーは絶叫してやたらにモップを振り回した。
猫は、いつものけだるい動作からは信じられないほどの敏捷さで逃げ回った。褐色の残像が上下左右に踊った。
一人と一匹は部屋中を破壊しながらぐるぐると走った。
ハンスの怒りは、次第にフィリックスを焦点とするのをやめ、周りの事物全てに向けられるようだった。
かれは、モップを振りかぶる時、わざわざ壁の複製画に角をぶつけるのだった。
偽のルノワールの少女がはじけ飛んだ。今しがた不躾な愛玩動物に蹴倒されたばかりの、貧相な「夫婦の思い出の品々」が
ひとまとめになぎ払われ、床にたたき落とされた。
ハンスは暴力に酔っていた。全身の血が沸き立ち、音を立てて頭からつま先までを駆け巡っていた。
その時声がした。
「ねえ」
ハンスは足を止め、振り返って上を見上げた。
階段の中程で、バスローブ姿の夫人が立っていた。
「何やってるの、あなた」
頭にタオルを巻いた夫人は、まっすぐ夫を見つめていた。彼女はまったく平静だった。
そこに冷笑はなかったが、驚きも恐怖もなかった。怒りも好奇心も見受けられなかった。ただ単純に質問だけがあった。

ハンスは、半身を後ろにねじったまま、蛇に射すくめられたカエルのように動きも言葉も失った。
突如として全身から汗が吹き出てくるのをかれは感じた。額の生え際あたりから汗がどくどくと流れおちて、
眉毛を迂回して目に入ってきた。体をこわばらせたまま、シュレディンガーは目をぱちくりさせた。
さて、この一瞬にして永遠とも思われる膠着状態の中で、マリー・シュレディンガーもまた、ある意味で当惑していた。
これは全く非現実的な光景というべきだった。いくじなしのハンスが突如暴漢に変身し、今までまがりなりにも秩序だっていた
ふたりの生活空間は、中世の傭兵による破壊と略奪はかくやと思われるばかりに滅茶滅茶な有様だった。
ところが、それを階上から一瞥した瞬間に、マリーは自分の中に、何らの感情の動きも覚えなかったのだ。
その事実だけが、マリーに少々の驚きをもたらした。
「あらまあ」
とマリーは肩をすくめた。ドラクロワ描く、自死のついでに自分の財産と愛妾を目の前で焼かせたアッシリアの王、
その眼にあったのと同じ倦怠と無関心がマリーの心の全てだった。
眼下で破壊と狼藉の憂き目に会っている食器や家具や調度品は、考えてみればどれ一つとってみても、
シュレディンガー夫人の執着の対象とはなり得なかった。
それらは皆、五年間になんなんとする惰性の痕跡というか、老廃物のようなものでしかなかったのだ。
そして、その残骸のただ中で肩で息をしながら自分を見つめているこの哀れな男。それこそ、いつでも捨ててやってよいのだった。
もっとも、一時的に血迷っているこの男が、攻撃の矛先を自分に向けてくる可能性は十分にあった。
マリーは、かれが自分を憎んでいることをよく知っていた。
それでも、と、冷静にマリーは考えた。地の利は自分にある、と。暴漢が階段を上って来るなら、蹴落とせばいいだけの話だった。
大柄なマリー・シュレディンガーは、腕力で亭主に勝つ自信は十分にあったのだ。

「だってお前の猫が」
それだけ言うと、ハンスは黙ってしまった。激しい肉体と精神の運動が一旦止まってしまうと、反動が訪れた。
あたりの惨憺たる風景が、まるでヒッチコックの映画の映像効果のように、遠近感を歪ませ、
自分に向かって迫ってくるようだった。
ハンスは自分のしでかした事に呆然としたが、しかし最大の危機はごく近い未来にあった。
この状況を女房にどう説明するのか、かれの頭脳は生来にぶい上に、さらに今は極度の混乱を来していた。
「猫…」
それだけ付け足して、ハンスはまた黙り込んでしまった。
「フィリックスがどうしたっていうの」
もはや、自分に対する危険はないようだったので、シュレディンガー夫人はスリッパの音をパタリパタリと響かせながら
階段を降りてきた。
猫は、倒れた傘立ての陰にじっと身を潜めていた。
「かわいそうに、悪いハンスがいじめたんだね」
マリーは近寄って腰をかがめると、なだめるようにフィリックスを呼び寄せた。
「ほらお母さんのところにくるんだよ。ミェツミェツミェツミェツ(注:ドイツでは猫にこう呼びかけるらしい)」
やさしく口を尖らせて微笑む彼女にむかって、猫はまっしぐらに飛び込んで来た。
シュレディンガー夫人は、猫を抱きとめると、かれの頭に存分にほおずりしながら、立ちすくんだままの夫のそばを通り抜けた。
目を細めて愛撫を受けるフィリックスは、もうその迫害者は目に入らないようだった。
マリーはそのまま台所に入っていった。水道の蛇口が大きく開けられ、ザアザアと激しく水が鍋底にぶつかる音が響いた。

ハンスは、床に散乱するガラスや陶器の破片を避けながら、おそるおそる台所を覗いてみた。
妻が何をしているのか興味があったわけではない。ただ、自分で自分の意志をまとめることができない虚弱な人間がいつもやるごとく、
その場に支配的な動きのもとに近寄せられただけのことだった。そして既に支配者はマリーなのだった。
マリーは、フィリックスを肩に抱いたまま、パスタをゆでるための、一番大きくて丈の高い鍋に水を注いでいるところだった。
夕食はもう終わっていたので、それは奇妙な行動というべきだった。
「フィリックス」
彼女は猫に呼びかけ、委細を察した賢いフィリックスは、一旦マリーの肩から床に跳び降りた。
首をもたげて見上げる猫の視線の先で、シュレディンガー夫人は流しから、水を一杯に満たした円筒形の大鍋を、
よいしょとコンロの上にすえ、火をかけた。
シューシューとガスが燃え始めた。その日常的で、人を安堵させる音響をバックに、マリーは歌をくちづさみ始めた。

ガチョウを返しなさい
ガチョウを返しなさい
でないと猟師に撃たれてしまうよ


マリーは鍋を火にかけたまま、他に何をするでもなく、再びフィリックスを抱き上げ、体を揺すりながら歌を続けた。

大きくて長い猟銃で
散弾を撃ったらお前は血まみれ
あっという間におだぶつだ


マリーは、猫の頭にほおずりしながら、よく愛唱されてはいるが、その実おだやかではない歌詞を続けた。
そして、ハンスに見られていることを十分に意識しながら体をねじった。
いつものごとく、偶然を装って視線がハンスを横切ったが、不思議とそのまなざしはそれほど冷たいものではなかった。
「お前、一体なにをしているんだ」
意を決して、夫は尋ねた。

可愛い猫ちゃん
泥棒はおやめなさい
ガチョウのローストはお前にはもったいない
ネズミでがまんしなさい


妻は、民謡を最後まで歌い終わると言った。
「何って、あなたがやりかけたことを続けているだけじゃない」
マリーは、フィリックスにキスをして話を続けた。
「これからこの猫ちゃんを殺すのよ」

トラ猫は、まったく自分の「お母さん」を信頼し切って、彼女の肩に抱かれて休らっていた。
フィリックスは人のぬくもりの心地よさと、危険が全く去ったと思われたことから、呆然と立ちすくむかつての仇敵を
余裕のまなざしで見やった。その目はいましがたのマリーの面白そうなまなざしのエコーのようなものだった。
この皮肉は、なにやら悪魔的な様相を帯びてきた。ハンスはガタガタ震え出した。
「さあ、残念ねえ、あなたの命ももう少しで終わりなのよ」
シュレディンガー夫人は、とろけるような笑顔でフィリックスに顔をよせて話しかけた。
愚かなトラ猫は、目をほそめて前足でマリーの頬をなでた。
シュウシュウと鍋が沸き立ちはじめた。湯気が立ちこめ、そのぬくもりがハンスの肌にも触れた。
シュレディンガー氏を、なんとも言えない悲しみの発作が襲った。
「やめろ」
絞り出すように、かれは言った。
「何で」
シュレディンガー夫人は、ことさら目を見開いて、首を突き出した。
「あなたがやりだしたことでしょう」
彼女は、台所から半身を突き出して、わざとらしいしぐさで居間を見渡した。
「ほんとうに見事なやりかただこと。あなたを見直したわ」
マリーは微笑んだ。
「だから私もお手伝いをしないとね。最後の仕上げの」

すでに、鍋はぐらぐらと煮立っていた。
マリーは堂々と両足をふみしめ、腰に手をやり、すっくと背を伸ばして、右手でフィリックスの背をつまんで高々とぶら下げた。
彼女は古代の女王のように威厳と勝利感に満ちていた。猫はおとなしくされるがままになっていた。
「お別れよ。フィリックス」
マリー・シュレディンガーは鍋に向かった。
ハンスは動転して妻に走り寄り、バスローブの腰のあたりにすがった。
「やめてくれ。お願いだから」
彼女の動きが止まった。腰紐がほどけて、バスローブの前がはだけた。
それを気にすることもなく、マリーはハンスに向かって振り返り、傲然とかれを見下ろした。
「やりかたが気に入らないなら言ってよ。なんなら毒で殺すのもいいわ。ビルから投げ下ろす。トラックにひき殺させる。
なんでもお望み通りにするわよ。あなた」
マリーは猫を片手にもったまま、屈んでハンスに顔を近寄せた。
「それともポーみたいに壁に塗りこめる?私は一緒はごめんだけれど」
ハンスはひれ伏して頭を下げたまま言った。
「ごめん、あやまるから」
マリーは、あきれたふうに立ち上がると、ガスコンロの火を止め、フィリックスを床におろした。
彼女はあらためてハンスの前に仁王立ちになった。張り出した両の乳房も、縮れたブロンドの毛で覆われた下腹部も、全てが露になった。
「何をあやまるの?」
彼女は静かに尋ねた。

しばし沈黙が場を占めた。ハンスはひれ伏した格好のまま、苦渋と混乱に顔をしかめていた。
トラ猫は、マリーの足下にうずくまった。まるで天界の女王の像の傍らに侍る異教の神像か何かであるかのように。
マリーの大きな青い両の目が、真正面からハンスを見据えていた。そして、おなじ色の光が、猫の目からも発せられていた。
四つの青い目が、厳しく、神聖な光線を伸ばして、ハンスを射た。
全く、理解不能な状況だった。どうしてこんなことになったのか。
シュレディンガー氏は、ただでさえ、ものごとを整理して考えることが苦手な質だった。
なので、この古代の神のように不可解で残酷な女房から発せられた問い、そして彼女の傍らにスフィンクスのようにうずくまっている、
この謎めいた獣の目から、無言のうちに発せられている同じ問いに、機転やら、的確な分析やらで、対抗することはとてもかなわないことだった。
それでも、この返答が、ハンスの全運命を決定することだけは確かなことだった。それだけが、確かなことだった。
かれは、体の奥から絞り出すようにして答えた。
「なんだか、わからないけど、全部だ!」
マリーは身をかがめて、ひれ伏しているハンスの頭に手をやった。
彼女の頭をターバンのように包んでいたバスタオルがほどけ、長い金髪がハンスの上に降り注いだ。
「全部?」
彼女は優しく尋ねた。
「そうだ!全部だ!俺は悔い改める!」
ハンスは、顔を上げないまま、叫んだ。
マリーは体を起こし、顎に手をやってしばし考えた。
「なんだかわからないけど、全部、ねえ」
彼女の顔がふとほころんだ。
「まあいいわ。あなたにすれば上出来よ」
彼女は改めて周りを見回した。
「とにかく、まずはここを何とかしなくちゃね」
彼女はため息をつくと、夫を立たせた。そして、自分が裸同然なのに、初めて気がついた。
「あらやだ」
シュレディンガー夫人は、バスローブの前を合わせ、紐をしめなおした。

これが、シュレディンガー家を襲った夫婦の危機の一部始終である。
壊れた家具や調度は片付けられ、必要なものは買い替えられたが、部屋は前よりも少しすっきりした。
シュレディンガー夫人の夫への態度は、その後もさほど大きくは変わらなかったといえる。
相変わらず主人をものともしなかったし、まともに顔を見る事も稀だった。
ときおり、馬鹿にしたような視線が、偶然のようにハンスの顔を横切るだけである。それもこれまでと同じ。
しかし、シュレディンガー氏はそれほど不幸でもなかったようである。
フィリックスは、この事件の後しばらくして家出をし、行方をくらましたまま、二度と戻ることはなかった。

終わり

キャスト:
ハンス・シュレディンガー:ペーター・ローレ
マリー・シュレディンガー:ジャンヌ・モロー
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