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『悪太郎』『関東無宿』

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『悪太郎』
鈴木清順 監督 日活 1963年


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『関東無宿』
鈴木清順 監督 日活 1963年


 相次いで作られた作品ながら、なんとも対照的な二本である。『悪太郎』は清順らしい才気が随所に見られるものの、基本的にはオーソドックスに演出された青春映画である。一方『関東無宿』は任侠映画のふりをした怪奇映画とでもいうべき代物なのだ。もっともこの場合の「怪奇」とはジャンルとしての怪奇ではない。ただ伊藤弘子が玄関でうつむき加減に座っているだけで何か怖いのである。この女性もまた、『野獣の青春』の渡辺美佐子にはじまる「二重の女」の系譜にある。ちなみに『チゴイネルワイゼン』では、この玄関での仕草が大谷直子によってそっくりそのまま反復されていて、これもまた怖い。
 この怖さは何だろうか?『関東無宿』は小林旭主演の仁侠映画なので、幽霊などは出てこない。しかしここには時折、顔を奪われたのっぺらぼうのような記号がぬっと現れるのだ。座っている伊藤弘子もそうである。不気味に間延びした表情の江角英明もそう。女子高生の松原智恵子と進千賀子が銀杏並木で戯れるという、この手の映画には明らかに場違いなシーンも怖い。これらのイメージがわれわれに襲い掛かってきそうだというのではない。しかし、お化けは立っているだけで怖いものなのだ。そう、お化けは襲い掛かってこないからこそ怖いのである。われわれが目にするのは、仁侠映画というジャンルの裂け目からぬっと現れる、物言わぬ不能の記号群なのだ。おそらく清順は、この『関東無宿』で映画の諸ジャンルの間に横たわる真空地帯とでもいうべき領域を発見したのである。そこでは諸々のイメージはあらゆる文脈から切り離され、ただの物質的存在にまで還元された己を見出すのである。この鈍く、冷たい感触は恐ろしい。しかしこの震えこそが、おそらく感動と呼ばれるものなのだ。

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